麻布大学附属動物病院

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【論文掲載】悪性高熱の既往を有する犬への再発予防を考慮した麻酔管理の1例

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【論文掲載】悪性高熱の既往を有する犬への再発予防を考慮した麻酔管理の1例

附属動物病院における軟部組織外科・腫瘍外科と本学獣医学部 小動物外科学研究室・高木ラボの共同成果がVeterinary Anaesthesia and Analgesiaに掲載されました。

【論文情報】
Use of total intravenous anesthesia with propofol and a vaporizer-free ventilator to prevent recurrence of malignant hyperthermia in a dog. Vet Anaesth Analg. 2026;53(3):101219. doi:10.1016/j.vaa.2026.101219

論文はこちら:
https://doi.org/10.1016/j.vaa.2026.101219

犬の悪性高熱症は、吸入麻酔薬や筋弛緩薬の使用を契機に発症する、致死的となり得る麻酔合併症です。
原因として、筋小胞体のカルシウム放出に関与するリアノジン受容体(RYR1)遺伝子の変異が知られており、ヒトを含む複数の動物種で報告されています。

一方で、獣医臨床においては本疾患に関連する遺伝子異常の検出体制は十分とは言えず、既往歴を有する症例に対する再発回避を目的とした麻酔管理も標準化されていません。

本症例では、過去に悪性高熱症を発症した犬に対し、吸入麻酔気化器を搭載しないベンチレーターとプロポフォールによる全静脈麻酔(TIVA)を組み合わせることで、再発を認めることなく麻酔管理を実施しました。
さらに、全ゲノムシーケンス解析により、ヒトの悪性高熱症で報告されているRYR1遺伝子変異と一致する変異を同定しました。

本報告は、悪性高熱症の既往を有する犬においても、トリガー因子の回避と適切な麻酔プロトコルの選択により、安全な麻酔管理が可能であることを示唆します。
本知見は、今後の麻酔管理指針の検討や遺伝性疾患としての理解の深化に寄与することが期待されます。